Mar,04 2016 なでしこは=澤だったのか

たとえば、2011年ドイツでの決勝では、坂口が一発レッドで退場になった。
これは端的な例だが、以前はもっと寄せていて、少なくともクロスもシュートも自由には打たせなかった。
だが、これまでの3試合すべてでこの部分でのミスをし、失点している。
なぜなのかまったく理由が見出せない。ドイツ以来のメンバーですら、ボールにいけない。横山と岩淵と後半の宮間くらいで、あとは皆コース・ゾーンをケアするだけでボールに行かない。
特に酷いケースでは、3人で囲んでも誰もボールに足を出さない・いかない場面もみられた。

ビルドアップでも、ドイツでの優勝以降、年々パス回しに汲々とするようになってきた。
年々研究されてマーク・プレスがきつくなっているからその中でパス成功率が落ちるのは仕方が無いが、自陣PA近くでのパスはカットされてはいけない。どうしてもプレスが来て苦しければ、ショートカウンターの餌食になるくらいなら相手陣内で相手にボールを渡す方がましだから、ハーフウェイラインより前に蹴りだせばいい、100%ミスってはいけない。
出しどころを見いだせず横若しくはバックパスが多いが、攻め手につながるパスでもないのにミスが多い。
それに、前線でシュートを打てるところで打たない、パスを選択する。以前から言われていることだが、今日も見られた。
より確実にという意識なのか?でも、手数を増やして良い事ってあまりないのではないだろうか。PAの中でつっかける、エリア外からでもゴールを狙う、よりフリーの人間を使う。これらがちぐはぐで、攻撃の形が出来ていない。


セーフティファーストのところで気の無いパス・プレーが多いが、とにかく、攻めも守りも全くリスクを冒せていない。
気持ちのどこかで守りに入った、そんな感が拭えないよ。

システムと布陣ビルドアップのために組み立てのできる田中と言っていたが、ここまでの試合ボランチとバックラインでのミスから失点し、それ以外にもピンチを招いている状態で急造ではないがCBに田中はない。
彼女は澤がいないときにボランチに入っていた、本来MFだ。いくらポリバレントといっても、前述したとおりミスが多い流れで、修正する時間も与えられない中ではいつものバックラインである鮫島・熊谷・岩清水・近賀にするべきだった。何のための「経験から選んだ」人選なのか。
攻めのための人選だったかもしれないが、攻守のバランスや良い攻撃は良い守備からということにあてれば失策。中国からすれば、CBとしての田中はありがたかったことだろう。
また、システムについても4-4-2から入って押し込まれたが、であれば4-2-3-1に変えるなど手を打つべきだった。
中盤で制することができないからずるずる自陣まで引っ張られる、前目の選手が下がって全体が下がるから遅攻になる。ボールを奪い返してもしっかり布陣されるから攻めあぐねる。
それに三戦すべてに言えるが試合中点を取りにいかなければいけない状況になっても人を変えるのがせいぜいで、システムも何も変わらない、戦術の幅が狭い。
相手からすれば、まずボランチを抑える、次いで得点力のある大儀見を抑える、これで半分済む。ルートが少ないのだから絞りやすい。確かに、4-2-3-1でも1点しか奪えなかった韓国戦はあるが、多くの時間は日本のペースだったし、もっと攻めることが出来ていた。

なでしこの優勝で女子サッカーは新しい段階に入ったどこの国も、少なからずなでしこのパス回しを取り入れて強化をしてきた。
でも、日本は5年間何をしてきた?ロンドン2位・カナダ2位・アジアカップ優勝、すばらしい成績ではあるが、5年間で世界中が進歩している中で、なでしこは成長を止めてしまった。世界はなでしこの戦術を取り入れつつさらに高めているにも関わらずだ。

澤の存在巷で言われる「澤ロス」その影響には懐疑的だった。
澤が眩暈を発症して以降、澤がサブだったり帯同しないことも少なくなかった。だからプレイヤーとしての澤不在の影響はアジア予選レベルでは大きくない筈。単純な精神的支柱といった意味でも当てはまらないと思う。
ただ、そんなものより遥かに大きな存在、例えばそのとき帯同しなくてもなでしこの10番は澤だった。神格化した存在、澤の背中があればそれでよかった・・・。
そんな風になっていたのではないだろうか。

なでしこの10番が澤だからなでしこはなでしこで在り得た。
決して大儀見が足りない、宮間が足りないのではなく、澤の存在が大きすぎて逆に見えていなかったのではないか。宮間はキャプテンやるには優し過ぎるのかもしれない、大儀見はまとめ役としては適任じゃないしね。
なでしこで在り得ただけでなく、澤の名前だけでチームはまとまっていたことも明白、それは監督ですらね。
初戦の横山投入の際のバタバタ、2戦目からの選手の涙。今までのなでしこからは考えられない、弱さ・脆さが出ていた。澤がいれば、同じ苦境でもバタバタにはならないし、折り返しにも達しない時点で涙を見せる事もなかっただろう。

現実問題リオは無理
奇跡は起きない、天命を待てるだけの準備・ゲームをしてこなかった。涙は5戦目が終わってから見せるものだった。
2011年日本に負けたドイツはロンドンには出られなかった。負けたところのレベルが違いすぎるが、なでしこが出られないのも一興。
例えば澤がリオまで現役でいてそこからフェードアウト的にいわゆる澤ロスするのか、果たしてどちらが良かったのか判らないが、結果として荒療治にならざるを得ない。
ならば、フィジカルは変えられないから、戦術の幅・持ち札を増やす努力を、他国が技術を上げるならもっと高い技術を、ゲーム・局面での考える速さを。
アメリカはなでしこのはるかに上を行く数の対外試合を行っているが、協会はもっと代表強化のための試合を。
アメリカの何倍もの心血を注がないと世界はおろか、アジアでも勝てなくなる。残念ながら、なでしこリーグは代表が落ちるとダメなのは分かっているでしょ。
それに今のU-20は強いよ、ここからの成長の速度が落ちないように協会は真面目に考えてほしい。その上の世代の横山があれだけできるんだよ、横山もU-17WCじゃすごかったけど、下の世代に才能の目は少なくないよ。

それにしても・・・多分、澤自身なでしこにおける自分の存在の大きさが解らなかったんだろうな。
そう思うと少し残念だ。

アトランタの頃からずっと見てきたけど、今回の予選は本当に残念だ。

なでしこの憂鬱 リアリズム