Aug,09 2023 なでしこ vsノルウエー
スペインに完勝した、とはいえ所詮GLの消化試合での事で、1抜けでも2抜けでもイングランド・フランス側の山にはいかずでクォーターかセミでアメリカとスェーデンとの勝者もしくはその勝者に勝ったお互いと再戦するってとこ以外は大差がない。
ただスイス・ノルウェーではどちらでも良かったわけだが、相性や期間中の成長に係る組み合わせの妙はあるかもしれない。
日本もスペインもR16がスイスじゃきつくない。なでしこに完敗は想定外で、100%ではなくてもある程度のゲームは作ろうとは思っていたはずのスペインにでも4-0なら、なでしこに力のあるところは見えた。
次は大柄で昔からなでしこの苦手とする放り込みと走り込みをやってくる北欧勢とのゲームならそこでどう対処するか、どんな勝ち方をするかで更なる地力を垣間見ることができると考えていた。
キックオフ、入りは五分だが徐々に日本が押し込み始める。
このゲームはポゼッション22%のスペイン戦と逆に圧殺する戦術を用い試しそこが嵌るかがポイント。
3-4-2-1の布陣は以前の4-4-2と比べて選手はより走らなければならないが、サイドバックが上がってCB2枚しかいない裏を1本で取られる日本の弱点をカバーしつつ、攻撃に厚みを持たせることができる布陣で、使い始めは懐疑的だったが、今更よくここまで落とし込んだし選手も対応していると思う。特に男子もそうだがウイングバックは相当きつい筈。
長身縦ポンを封じるには引くより出て、前からのプレスと中盤の厚みでハーフウェイラインより前でポゼッションしつつ適時縦パスを入れて圧をかける。ノルウェーは4-3-3の布陣だったがチキタカしないバルサ?アンカーの脇のスペースを使ったり比較的攻めやすい予想はしていた。でもリヨンの黄金期を支えた選手や、バルサのスタメンにアーセナルの選手もいるから個の力はそれほど劣りはしない、それでも全体に押し込むことができてペースは作れた。
そうなるとノルウェーも5バックの布陣を敷いてきた、4-3-3のアンカー脇を使われるより固めて縦ポン一発ロングカウンター狙いに変えてきた。
先制点はOGだが、(日本の)右サイドから走り込んで来られたら、そう考えればノルウェーの7番は本職のCBではないし責められまい。おまけに右は清水と宮澤、当然スカウティングはしてる筈であの手のクロスはゴール前に抜けさせたらダメという決め事はあったと思う。もちろんGKや他のDFからスルーの声がかからないのは、そういうことだと思う。仮にあれをクリアされても何れ同じような形からゴールを割ることはできただろう。
ただ先制の5分後に追いつかれたのはいただけない。先制してその後のノルウェーのゴールキックで気が緩んだかもしれない。5バックのラインの縦位置は概ね揃っていたが、遠藤が中に寄りすぎていてその空いた左ののスペースをゴールキックと相手の右サイドに抜かれフリーでクロスを上げられそのままヘディングを叩き込まれた。五分の相手なら下手をすれば流れを失うところ。
まぁ昔から有り勝ちな放り込みのボールへの対処で競り負け、田中ともう一人が身体を寄せていたがヘディングをぶらすまで当てられていない。その前に楽にクロスを放り込ませてしまったことに改善が要る。
ここは遠藤の位置が悪くそこを突かれたので、改善はできるだろうが似た形をゼロにはできないだろう、ウイングバックが上がった後などのロングカウンターの対策は改めて必要。
恐らく次のアメリカかスェーデンと、その先行けばスペインとオランダの勝者、決勝まで勝ち上がった相手がイングラドだった場合はもっとやられるし、スペインだやフランスだって戦術の一つとしては取り入れてくるだろう。
最善はボールホルダーに寄せて上げさせない、次善は仕方なし無理やりシュートかクロスか判らないボールを打たれる、クロスを上げられたらファールに注意して体を当てる。
この先はこのあたりがしっかりできないと、スペインにやったことの逆をやられるかもしれない。
ここで一つ課題(気の緩みとしか思えん)が出たし、初失点から崩れるゲームもあることを思えば失点になれる意味でも結果オーライ。
前半の途中から布陣を変えてゴール前を固めにかかったノルウェー相手にゴールショーとはいかなかったが、それなりに強度のある相手に清水と宮澤が得点し勝ち切った。
清水のゴールは相手DFの足に当たってコースが変わって少しツキもあったがその前、ノルウェーの5-4の短い隙間に遠藤がパスを通した。このライン間のパスで人数はいてもノルウェーの守りは崩れた。
その後も圧をかけに出てはいたが、バックラインが下がりシャドーから前は前線にと全体が間延びした時間があった、その後3点目が生まれたことから引き寄せのために後ろが下がったのかは解らないが、意図してないものであれば改善が必要。
基本中盤飛ばしてというのはなでしこにはない、もちろん時としてやる必要もあるかもしれないが、3-4-2-1の意図が隙のないディフェンスからの攻撃であるから、間延びしてスペースを生んで3対3などの状況を作られるのは良くない。
次はアメリカかスエーデンか、主軸に衰えが見られ世代交代がうまくいっていないアメリカの方がくみし易そうだが、相性はスエーデンの方が良いかもね。
引いても出てもそれなりにやれるのは実証できた、その先はまだ足りないものを埋めながらの戦いになるだろう。危ない状況になっても立ち返る布陣はあるので2011とはまた違う力を見せてほしい。
ここまではアメリカvsスェーデンの前に書いた。
やはりアメリカのピークは2015で、ラピノーやモーガンに衰えが来たらチーム力が落ちたと思う。
それでもアメリカに怖さはあった、怖さの源はなんだろうと考えると一つはスピードとデュエルとキック力。ワンバックの高さは脅威だったが、ワンバックがあまり出ていない2015でも圧倒的だった。
高さはそれなりだが北欧勢などと比べるとそれほどでもない、ボール扱いの技術も日本やスペインの方が優れているから、身体的な能力の高さと常にゴールを狙うというシンプルなサッカーに必要な事の徹底が怖さの源だろう(大雑把だが)。
だから熊を除くと、猶本・杉田の世代以降の経験値が低いこともあり身体能力で押してくるチームは難しかったと思うので、ノルウエーのアップデート版といえるスウェーデンの方がまだくみしやすい(高さと身体能力の高さは別物です)と思う。
恐らくスウェーデンはある程度なでしこにボールを持たせて、両ウイングバックの上がった後ろにロングボールを入れてサイドの選手が一気にアタッキングサードまで走りクロスを入れる攻めを軸に、上げられないならPA近くでのファールを誘う動きをするなど長所を活かす機会を増やす戦術を取るだろう。
なでしこの中は固いから基本的には両サイドの攻防が勝敗を決める。外を使う時はリスクを伴うが、なでしこは中→中といった縦につけることでも攻められる、スウェーデンに対しては外・中、機に応じ攻めることで圧殺できるかもしれないし、その先を考えればそれができないと厳しいと思う。