Oct,01 2023 なでしこの行方

攻めて良し守って良しで、何よりトランジションの速さから造る相手の乱れを突いて効率よく、しかもスピーディーな展開のサッカーに世界は魅了された。
蹴り合いと個の力が主流と言えていた女子サッカーに戦術と規律を持ち込んだ2011を重ねれば、交代枠増加といった新ルールを利用した新たな戦術構築(なでしこならではだが)を持ち込んだここは優勝すべきところではあったが、ピースが少し足りなかったのと、緻密な戦術に綻びを付けたことでスウェーデンに負けてベスト8どまり。
このサッカーは今後研究され模倣なども現れるだろう。ただ現状では基本的にはなでしこしかできないものではある、スペインもバルサにチキタカに拘らず戦術の幅を広げるというのであれば、できるだろう。バルサを殺すマドリーのやり方という見本があり、自分たちの嫌な事は重々承知でそれを基本にした戦術・布陣なのだから。

なでしこの価値
勢いのままスウェーデンを押圧するサッカーを頭からやっていれば個人的には勝てたと思う。
受けに回ってラインが下がり特に左WBが5バックの左状態となり宮澤の良さが出なかった。押されるのを返すだけのつまらないサッカーにした。
結果として極東のベスト8国では、フレンドリーでは来てくれない。次戦はアルゼンチン戦だが、ただの興行であり意味はない、勝っても価値はあがらないしチームとしての進歩もない。
2011に日本に敗れたアメリカは、翌年から強化のためにどんどん出向いて行った。たしかリーグがうまく回っていない時期でリーグ戦がなかった時期だったと思うが、当時欧州の中でも強かったドイツはもちろんイギリスやフランスなど、積極的にアウエーで戦った。
その途上にあったロンドン五輪ではなでしこを上回り、2015は大会を通じて圧倒的だった。もちろんあの決勝も、なでしこに油断・慢心が無ければ開始早々のフリーキックをグラウンダーで入れられ、虚をつかれた形であっさり点を取られたかどうかといった部分はある、それがなければ一方的な流れになったかは分からない。
ただ間違いないのは、アメリカは強化のため積極的にアウエーでのマッチメークを行い少しでも厳しい試合を多くやってきたこと。
なでにしこには来年のパリでなら、まだ捲土重来は可能だが、欧州に乗り込んで開催国フランスやイギリスなどとのマッチメークをしていかないとそれは無理な話だ。高倉体制での2019では確かドローだったが、本来点差を付けて勝つべき相手であるアルゼンチンを呼んで大切なAマッチデーを無駄にすることはない。ましてや五輪予選前であり、アルゼンチンよりアジアの方がレベルは高いが戦術もアジアとは異なる。
2戦できる機会を呼べずもう一戦アルゼンチンとテストマッチとのことだが、欧州がユーロの最中とはいえ協会は頭使わないとね。北米行ってアメリカ・カナダでも良かったわな。

サイドバックとウイングバック
かつての4-4-2頃はサイドバックが高さを取ってというのが攻撃の特徴であったが、カウンターを食らうとCB2枚で対応しないといけないというリスクを抱えていた。
3-4-2-1とすることでそのリスクを減らし、交代枠が増えたことで消耗激しいWBも変えられる環境ができた。だが現状右は清水に頼り切りで、左も杉田はいまひとつおぼつかない。
男子の様に4バックとの併用、また4バックでも押圧できる戦術の落とし込みは必要になるだろう。
3-4-2-1でボールを持てても、男子のW杯ドイツ戦の後半の様に攻撃的な選手を8人入れるなどしないと相手が亀のようになったら難しい、スイッチが入ったら相手エリア内に複数人飛び込む戦術も必要だ。
W杯のGLでは格下相手故複数点を簡単に取ったが、力量が近ければ、特にフィジカルが強い相手から持たされても攻め手を欠く格好になるだろう。
それと性急過ぎる世代交代は積み上げてきた良さを消しかねない。熊谷だけでなく手薄なサイドは鮫島など現役張ってる選手(安藤はWEのMVPだがどうした?CBとFWは若手で足りているからか?)は呼ぶべきであり、現メンバーのトランジションが早く云々と言っても経験に基づくポジション取りなどが出来ていないと無駄走りになるだけなので、経験の多いベテランと組ませて試すことも必要。
事例としては少し違うが、男子のトルコ戦で終盤遠藤を入れても最終ラインまでは解決せず(1点入って決まった感はあったが)富安まで入れた。
結局主力を2枚入れてようやく落ち着いたところを見るとフルで相応やるには経験等が要るが、前体制では熊がいてもダメだったようにピッチ内の監督が要る。熊はよくやっているが、先の男子のトルコ戦もそうだがライン毎に主力/経験者とのペアリングで試しつつ伝える・引き上げるということは必要だろう。

とにかく五輪予選は2枠で、決勝でオーストラリアと当たるなら良いが、その前の組合せ的にセミでオーストラリアと当たる可能性がある。
AFCのマッチメイクには甚だ疑問(政治力もある、ただ女子は中東は関与しないだろうけど)だが、ここを落とすとリオを落とした時より女子サッカー全体に響く。
各国リーグ戦があってメンバーもそんなに変わらないであろうパリ五輪は、ベスト4以上を狙える機会である。16か国という狭き門にはW杯の様なランク下位の国は少なく、GL突破から先は強豪と伍す必要があるが、今なら伍せるし決勝も狙える。
そんな五輪予選、アジアでの戦いはW杯での戦いと違い難しいが協会をあげて切符を手にしてほしい。

森保のドタバタ采配 進化と深化