Feb,24 2024 なでしこは矜持を取り戻せるか

先ほどパリ五輪アジア予選のセミ第一戦が終わった。
アウエーゲーム扱いのサウジでの北朝鮮戦はドロー。レギュレーションにアウエーゴールは無いから、二戦目の国立では延長からPKまである。
普通ならホームチーム有利だが、なでしこは存外ホームの方がプレッシャーがあるのかよくない。リオを逃した最終予選も日本でのサテライト開催だった。
男子と違い五輪もフル代表となる女子では、W杯より五輪の方がステータスが上だったりする。実際欧州でも2枠しかない五輪枠だが、出ることすら難しい。これは数年前までは女子のレベルが南米より上で欧州以上ではあっても下はないアジアも同様。
リオを逃した際は衰退著しい中国に負けたり良いところがなかったが、意外とアウエーの厳しい中での方が反骨心からか勝ちを拾えるのがなでしこだったりするからホームで無ければとも思った。

場外戦で北朝鮮にいいようにされ、日曜に欧州でゲームがあったメンバーは欧州待機からのサウジ合流。遠藤・宮澤を怪我で欠く左サイドは古賀と植木の急造で、コンビネーションを築く間もなくゲームに入った。
布陣は4-3-3、女子W杯を終えてから多用している布陣だが、急造の左サイド中心にコンビネーションがイマイチ。所謂チキタカ布陣だがこのメンバーでやるなら4-4-2や4-2-3-1の方がやりやすかったのでは、とも思う。
古賀は本来CBの選手でブラジルとの親善試合やアジア大会で良かったことでの起用だろうが、本職でないポジションで勝たなければいけないプレッシャーのある五輪最終予選は難しい印象。
絡む南に植木や長野を含め指示はあったと思うが、慣れないSBとしては機能していなかった印象。実際植木との距離感が悪く、植木自身も左のアタッカーとしてうまくボールを引き出す動きができていなかった。
これは左サイドに限ったことではないが、5バックの前に4枚並べて壁を作る北朝鮮の守備に手を焼き攻め手が見つからない。日本と北朝鮮のゲームで過去に北朝鮮がこうしたブロックを作るやり方はしなかったと思う、アジア大会では五分に見えて日本の方が優勢で結果にそれが出たことからか、失点しないこと、日本が苦手とするロングボールとフィジカルを活かしたフィニッシュで得点機を作るといった戦術を取ってきた。
男子でもそうだがアジアでは格上の感を抱かれている、正面からサッカーでぶつかり合うとスペインでも危ういが、蹴り合い、それも単純なロングボールとフィジカルを活かしたサッカーなら伍せるし上回れるかもしれない。そんな意図だろうが、元々弱くはないしお国事情からみっちり合宿をしていたそうだがコンビネーションなどは良い。何より意識や意図が共有されているし日本戦への意識も高い。
遠藤・宮澤といった柱を欠き、そのポジションに当てはめられただけに見える選手との戦術共有とすり合わせもままならない、ましてや合流遅れでサウジへの移動などもあり良さが消えていた。
場外戦から仕掛ける、サッカーのゲームではなく戦争と思えば当然の戦術だが、産油国でもないならFIFAやAFCがだらしないからの結果とは思う。ただやり口はともかく必死なのは解る。
開始当初こそ押し込んだが、その時間をしのがれるとポゼッションする日本とそれをブロックではね返しロングボールをアンカー熊谷の脇で古賀と南の間、やはり熊谷の脇で上がった清水が抜けたバックラインに放り込む。
攻め手はCF一枚だが、コンビネーション/補完性が今一つなバックラインは高さを保てなくなり下がる。点を獲りたい前線は前に残るが相手DFへの圧は低く次第に間延びした布陣となり距離感が更に悪くなる。
距離が長くなるとコンビネーション・補完関係の悪い日本はパスが通らなくなり、相手の5-4ブロックに引っかかる。クロスやフィニッシュまでいかない、アタッキングサードより自陣でのロストは上下動の多いSB中心に消耗し、カウンターを浴びる事が増える。
すると4バックは上げられずGKや4バックからのポゼッションはアンカーの熊谷経由となる。そうなるとアンカー熊谷を抑えてボールを奪ってショートカウンターが発動できる、前半の終わりから後半は布陣全体に機能不全を起こしていて、メディアじゃやり玉に上げられていた熊谷だが、熊谷に責任を押し付けるのは間違いだし何よりそうなる原因を見落とした感情的で稚拙な見方だ。一つ熊谷の事を書けば、全盛期のリヨンでCBとボランチを任されスタメンを張って移籍したバイエルンでも概ねスタメンでリーグ優勝を果たしている。レベルが違う中でフィジカルの劣る日本人がそこまでやってきたことを鑑みれば、凡そ限界説など言えねーわな。
で、後半途中で熊谷と長野を下げて谷川と中嶋を入れたが、中嶋を入れても左SBが古賀のままでは機能しない。谷川を入れて少しボールを持つ時間が増えたが程なくして対策され機能しなくなる。点を獲りに行くなら古賀→普段SBやってる杉田として機能不全の打開を図ってもよいし、熊谷・南・古賀の3バックに、清水と杉田をWBに、長野・長谷川(か一枚前へ上げて谷川)をボランチとしてロングボール対策、引き分けでも良いしロングボールを封じ込められれば前は1-2か2-1を田中・植木とIHから上げた長野か長谷川か交代枠からドリブルで運べる中嶋で良かった。

内容的にはボールを持たされ攻め手を消されてロングフィードで取られるところだったが、山下の好セーブと北朝鮮の決定力の無さに救われた。英米あたりが相手ならけっこうやられたかな、2011で負けたアメリカはポゼッション取り入れたりなりふり構わず復権を目指したね、ロンドンでは勝ち目はあったが2015は「自分たちがやってもメリカにやられることはない」というようなグラウンダーのFKからやられたが、地力のあるところがなりふり構わないと引き出しの少なさで手も足もでなくなるね。
今回北朝鮮相手でフィジカル差は大きくないから耐えられたが、同じことをされたら持たないかも。ただ北も手の内出したわけで、90分これをやることはないだろう。日本も急造の左は手を入れるだろう、守備面やトランジションで遠藤に遅れを取った感はあるが点を獲りに行くと割り切るなら杉田をSBに、前も2トップ(相手DFへの圧という意味でどうか)にしての4-4-2や中盤を厚くする4-2-3-1、可変して4-3-3もできる。3バックにするときはアタッカーかFWを古賀に変えて移行できる。
放り込みをされて間延びするなら4-3-3はそれが配置として良いであろう局面にならないとやらないと思う、清水や杉田の攻撃参加を促すなら4-2-3-1にして(収まるCFに疑問ではあるが、上野あたりならU20での経験等から収まるかなと)追い越し、深い位置から攻められれば得点機も見えてこよう。

リオを逃した時はお通夜の様な空気だった。澤引退以降あれが凋落の一つ転換点であったのは間違いない。その後の高倉政権下での不振から昨年W杯で勝てるなでしこが見えるようになった。男子と比べると選手層の薄さはあるが、北朝鮮とのゲームは成長を促す良いゲームだ、パリへの切符と積み上げ・底上げを期待する。

ただただ、悔しい・・・ 立ち返る場所